World 世界観

イアルの海

プロクシマ超大陸を取り囲む、地図上の空白地点が多く残された海。

ふたつの“海”

プロクシマ超大陸における海とは、大別して二種類が存在する。

ひとつは、自由都市ネロの浮かぶ内海、あまりにも巨大なために波濤すら生ずる湖である。
外洋とは恐らく地下でつながっているが、その詳細は定かではない。
そしてもうひとつは、超大陸を包む外海である。
海岸線に存在する湾は比較的穏やかだが、そのエリアを少しでも越えると、文明の侵入を阻む凄まじい荒海である。

外海は、ドワーフ領域の一部を除いてほとんど探索されておらず、地図上の空白地点が多く残されたままで、いわゆる大航海時代は未だ到来していない。
なお事実として「イアル」が球形をしているかもまだ確認されておらず、一部の旅商人が噂話、奇説として語るにとどまっている。

もちろん、外海を越えた向こう側には別の大陸や無数の諸島が存在することが確実と推測されているが、現在のところ、その全貌は謎に包まれている。
プロクシマ超大陸を包むイアルの外海には、幾多もの驚異が存在しているからである。

ビーストによる航行妨害

まず容易に挙げることのできる理由のひとつが、外海には巨大ビーストが相当量存在していることだ。
クラーケン、アスピドケロンなど、ほぼ魔獣サイズのビーストが相当数存在し、外洋に出る船をまんまと餌食としている。

巨大なビーストは体躯に見合った獲物を欲するため、地上の種族が造った船などは格好の餌食でしかない。
それらの大型の敵を打ち倒すに足る火薬式の大砲などは、その先駆者であるドワーフたちにしても未だ黎明の技術に位置するため、巨大な敵に対しての対抗手段がないというのが実際のところなのである。

一方で、イアルにおいて大砲に匹敵するほどの大きな攻撃力を発揮するであろう、魔法/魔術はどうか。
これも後述する理由により、海洋上では魔術がまともに働かないのだ。

スフィラの混乱/技術的問題

イアルにあって大容積を誇る大船を作る技術自体は、自由都市ネロへの定期船が存在する以上、技術的には不可能ではない。
但し問題となるのはネロに向かう船は、どれも特殊な「スフィラ駆動」によって推進力を補っているという点にある。

外海では、スフィラの流れが大きく乱れているからだ。
地上ですら、スフィラの濃度は場所によって異なり、しかも日々変遷することが確認されている。
一方、海洋におけるスフィラの乱脈は想像以上で、スフィラ駆動を用いた船は、まったく意図しない方向に船が流れていく。
しかも流れ着いた先に大型ビーストがいるようでは話にならない。
スフィラによる推進機関が発展している分、それが役に立たない状況において、現在のイアルの航海術は無力に近い。

外洋では原始的な風まかせの航行術に頼るほかなく、無謀と呼べるほどの大きな危険を伴うのは避けられない。
外洋への航海者とは、それだけに超大陸プロクシマにおいて、常に勇気ある者の代名詞にもなっている。

また、キャラバンが外洋を渡るのも難しい。
キャラバンの動力もやはりスフィラであり、ある程度は自然のスフィラネットワークとも言うべきものに従って移動なり飛行なりを行っている。
外海では、洋上と同じく上空にもスフィラの乱流が渦巻いている。
ある程度の短距離を除いては、安定した飛行は難しいと言わざるを得ない。